2018年の実績
本院は、これまで3346件のガンマナイフ治療を実施しています。なお2018年の治療件数は以下の表のとおりでした。
2018年の治療件数は201件でした。
転移性脳腫瘍 | 153件 |
髄膜腫 | 19件 |
聴神経鞘腫 | 6件 |
脳動静脈奇形 | 5件 |
三叉神経痛 | 3件 |
下垂体腺腫 | 4件 |
グリオーマ | 2件 |
その他 | 9件 |
治療件数という数字の背後には患者さまそれぞれの背景があります。がんとの苦しい闘いの後に、脳にがんが転移していると宣告された患者さまの絶望は深いものがあります。ガンマナイフ治療は、切らずに治せることから、手術を受けられない患者さまの最後の依りどころとなっています。患者さまのガンマナイフ治療に対する期待は大きいのです。
下図は乳がんが原発の転移性脳腫瘍の患者様です。ガンマナイフ治療後、脳幹に新たな転移巣が出現し、2回目のガンマナイフ治療を行わなければなしませんでした。幸いガンマナイフ治療が有効に作用し、脳については治癒したと判断しました。通常、脳転移は治療せずに放置すると、余命は4-6ヶ月と言われています。私たちが治療目標としているのは脳転移による死を回避することである。
症例は61歳の女性。乳がんに罹患し、ホルモン療法を受けました。右手の麻痺をきたして脳MRIを検査したところ左前頭葉と左小脳半球に脳転移巣を認めたためガンマナイフ治療を行いました。
左前頭葉、左小脳、延髄の3病巣とも瘢痕化し、治癒したと判断しました。
病気と闘っている患者と家族に、私にできるベストを模索して治療に努めていますが、時にはガンマナイフ治療紹介画像は絶望的な状況なこともしばしばで、神に祈るような気持ちで治療する事も多いです。
転移性脳腫瘍に限らず、手術だと神経症状を来す可能性が高く、高齢または体力的に手術に耐えられない患者さま、髄膜腫、聴神経鞘腫や下垂体腺腫などの良性腫瘍、薬が最早効かなくなり堪え難い顔面・口腔内の電撃痛を有する三叉神経痛などにガンマナイフ治療は効果的です。
■脳腫瘍
転移性脳腫瘍、髄膜腫、聴神経腫瘍、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、松果体腫瘍、血管芽細胞腫、
脊索腫、三又神経鞘腫、グリオーマ等
■脳血管障害
脳動静奇形、海綿状血管腫、硬膜動静脉瘤等
■機能性疾患
三叉神経痛、パーキンソン病、てんかん、頑痛症等
■眼窩内腫瘍
副鼻膣内腫瘍、頭蓋骨、頭皮等の種々の疾患等
治療の概要(入院〜退院の流れ)
1.外来受診
脳神経外科学会認定専門医でガンマナイフ治療を専門にしている医師が、疾患が、ガンマナイフ治療の適応疾患であるか判断させていただきます。ガンマナイフ治療が適応であると判断された場合、ガンマナイフ治療がどのように行われるか説明し、治療をご希望されれば治療日程を決定します。
2.入院
通常は、治療の前日の午後2時に入院し、治療前の諸検査を受けていただきます。
3.治療当日
治療に必要な準備の後、午前9時から局所麻酔下にフレームを装着します。
その後、造影MRI検査(疾患によってはCTスキャンも検査)を実施します。検査終了後に、治療医はガンマプラン(治療計画)を作成します。ガンマプラン(治療計画)が出来るまで、患者様は自室で休息をとって頂きます。ガンマプラン(治療計画)ができましたら、患者さまやその家族に治療計画を説明した後、ガンマナイフ治療がはじまります。治療には痛みを伴いません。ガンマナイフ治療が終了した後、フレームを外し、鉢巻き状に包帯して自室でお休みいただきます。
4.退院
問題なければ午前中に退院となります。
5.退院後のフォローアップ
疾患や症状によりますが、通常、転移性脳腫瘍の場合、ガンマナイフ治療後、1ヶ月と3ヶ月に外来受診していただき治療評価をします。良性腫瘍の場合には6ヶ月後に治療評価の期日を設けさせていただく場合が多いです。
二泊三日の入院で日常生活復帰
ガンマナイフによる治療は一日で終了しますので、平均入院期間は僅か3日間です。術後回復期の創の消毒の必要もなく、退院後すぐに日常生活に復帰することも可能です。
ガンマナイフの治療効果は、従来の開頭手術に劣らないことがすでに臨床的に実証されています。開頭手術に比べて感染症や麻痺などの合併症の恐れも圧倒的に少なく、全身麻酔の必要もないため高齢者でも安心です。
開頭手術では到達が困難な深い場所の腫瘍や、後遺症が心配される場所の治療も可能です。
治療には健康保険が適用され、さらに脳外科手術で必要な術後の回復期の入院が不要のため、治療費の面でも多くの経費を削減することが出来ます。